なるべくたくさんの社員を巻き込む
人事評価制度を作る際は、なるべく多くの社員さんに関わってもらうようにしてください。
各部署から担当者を集めて、打ち合わせを進めていくと思いますが、 密室でコソコソするのはよくありません。リストラや給料を下げるための密談だと思われます。
決まったことも、検討中のことも、タイムリーに社員さんに公開します。
こんな項目で評価しようと考えているが、どう思うか?他に評価してもらいたい点はないか?といったことをヒアリングします。
社員さんが人事処遇に対して、強い不満を抱いていると予想される場合は、ガス抜きの意味も込めて、事前に社員アンケートをとってから検討作業に入ります。
成果につながる重要業務を抽出するために、社員さんに自分が行っている業務の洗い出しをお願いすることもあります。
社員の皆さんに、人事評価制度の作成作業に参加してもらうのは、
- 他人事ではなく、自分事として人事評価制度を捉えるようになる。
- 作成担当者の物理的・精神的負担を軽減する。
働きがあるからです。
評価しやすい人事評価シートにする
「評価しやすい=シンプルな仕組み」とばかりに、シンプルな人事評価制度を目指せば、目指すほど、評価を行う際には、逆に評価しづらくなる傾向があります。シンプル化は抽象化を招くからです。
今流行りのコンピテンシー評価(仕事のできる人の行動特性を設定して評価する手法)の一覧表に、「誠実さ」(仕事や他人に対して、まじめで真心がこもっている)という評価項目を見かけたことがあります。
評価の場面で考えてみると、「誠実さ」とは、具体的にどんな行動を指すのでしょうか。
“仕事や他人に対して、まじめで真心がこもっている状態”というのは、若手とベテラン社員、営業職と事務職では、求められる行動が業務・作業レベルで異なってきます。
具体的に、どの仕事ぶりを見て、“まじめで真心がこもっている状態”と判定するのかを決めておかないと、評価ができない、あるいは評価できたとしても、人によって視点が異なるので評価結果にバラツキが生じてしまいます。
だからといって、細かすぎるのも、もちろん問題があります。
特に中小企業の場合は、同じ部署・職種であっても、この人は、他の人達とはかなり異なる仕事に就いているというケースに出くわすことが多々あります。
この人の仕事に合わせれば、合わせるほど、評価しやすい評価シートが出来上がりますが、それはオンリーワンの評価シートということでもあるので、給与や賞与を決める際に、他の人とのバランスをとるのが難しくなります。
このあたりのさじ加減を上手に行う必要があります。
評価に慣れさせる
特に、人事評価制度を初めて導入する会社さんの場合、評価する側も、評価される側も、評価に慣れていません。
評価する側の上司にしてみれば、いきなり部下を評価しろと言われても、戸惑うばかり。部下の仕事ぶりをしっかり把握できていると自信を持って言える上司は少ないでしょう。
さらに、人事評価となると、自分の評価結果のいかんによって、部下の給与や賞与に少なからず影響を与えることになりますので、今まで経験したことのないプレッシャーにさらされます。
ですから、なるべく早い段階から、評価すること自体に慣れてもらう必要があります。
評価される側の部下にとっても同様です。自分ではしっかり仕事をしているつもりでも、上司から見るとそうでもない。会社や上司の視点から、つまり客観的に自分の仕事ぶりを評価できるようにならないと、仕事における成長は望めません。
評価シートが完成していない段階から、上司・部下双方にシートを手渡して、試験的に評価してもらってください。
評価に慣れるだけでなく、評価しづらい箇所が見つかったり、改善案も出てきたりと一石二鳥の効果があります。
人事評価シートの内容が自然に話題に上るようにする
これがいちばん大切なことかもしれません。
普段から耳にタコができるほど社長に言われていること、日常的に上司から注意を受けていることが、評価シートにそのまま載っている状態にするのです。
「社長が言ってること」「やるべきこと」「評価されること」が、てんでバラバラなケースが結構あるのです。
この3つが一気通貫でないから、評価時期になると、人事評価シートを机の奥から引っ張り出してきて、その場だけ評価するという事態を招くのです。
だから、評価が大変な作業になります。苦役以外の何物でもありません。
普段注意していること、注意を受けていることが、評価シートに載っていれば、評価する側も、評価される側も本当に楽になります。自然に評価に臨めるようになります。
こうなって初めて、人事評価制度が社内に定着したと言えるのです。